イギリスで今も行われている戦争について
皆さまは現代イギリスで行われている血を血で洗う戦争についてご存じでしょうか。新聞等には載っていませんが、古くからイギリスにおいては二つの人種が常に争いあっており、平和とは程遠い争いをしています。
今回、僕はこの恐るべき戦争について語りたいと思います。これは国家機密レベルの秘密なので、おそらく僕はMI6によって消されるでしょう。それでもここに真実を書き残しておきます。
イギリスの抱える大きな闇。それは―
「MIF・MIA戦争」です!!!!
ついに触れてしまいました。誰もがその恐ろしさに触れなかった争いです。これに比べれば移民問題や宗教問題は道端の小石のようなものです。
これは「Milk in First」と「Milk in After」の争いです。つまりミルクティーにミルクを先に入れるのか後に入れるのかの争いですね。この二つの宗派についてイギリス人は二百年ぐらいレスバトルを行っています。
くっっっっっっっそどうでもいい~~と思うかもしれませんが、イギリスの誇る紅茶文化。非常に重要なことです。
かつて栄華を誇った大英帝国がアヘンを売り払って手に入れた茶葉と、新大陸で奴隷を働かせて手に入れた砂糖が生み出す文化ですから。
英国はマジで紅茶狂いで、世界大戦では戦車に紅茶用のポットを積み、配給では茶葉とカップが配られました。戦後は戦闘機パイロットが紅茶を片手にアクロバティック飛行をして喝采を浴びたりしてます。何やってだこいつら。
というわけでここで紅茶文化について色々書きます。一人の人間としてイギリスの闇を暴くんだい! かかってこいや女王!
紅茶の歴史
すごい簡単に説明します。17世紀ぐらいに紅茶が到来しますが、当時はクッソ高価で一部の上流階級しか飲んでませんでした。しかも飲み方が分からなかったので、茶葉をそのまま食べていたりしたそうです。お腹壊しそう。
代わりに流行っていたのはココアです。ココアってそんな昔からあるの、とか思いますが、紅茶よりよほど古いです。当初は薬扱いでしたが、1657年にロンドンに「チョコレートハウス」が登場。飲みやすくするために卵だの砂糖だのワインだのを放り込んでいましたが、ミルクが一番美味いということで、ミルクココアが大流行りします。
ですが18世紀になると「紅茶もミルク入れればいけるやん!」ということでミルクティーが流行り、19世紀になると庶民でも手に入るぐらいに安くなります。酒より健康的! ということで大流行りします。ちなみに当時の飲み方で人気だったのが紅茶のブランデー、もしくはウィスキー割り。健康的とは一体……?
最盛期には紅茶によって様々な文化が生まれ、紅茶占いはその最たるものです。これは紅茶を飲んだ後、カップに残った茶葉の形で運勢を見るというものです。骨のひび割れ方で占いしてた邪馬台国かな?ちなみに現代も続いており、専用のカップがお店で売られたりしてるそうです。
そして色々あって現代に至ります。端折り過ぎた感あるけど、面倒なのでこれでおわりです。
紅茶のルール
紅茶についてはまず、イギリスに長く伝わるゴールデンルールというのがあります。大事なことなのでこの際覚えておきましょう。紅茶の淹れ方を知らないと、誤ってボストン沖に茶葉を入れてしまうこともありますからね(英国公式発言)
ゴールデンルールはたったの五つです。
1、新鮮な茶葉を使え。高価なものでももったいぶらずに使い切れ。
2、ちゃんと分量を計れ。
3、良い水を使え。勢いよく注いで空気を混ぜろ。
4、水は沸騰させろ。温めたポットはやかんの傍に置いとけ。
5、ちゃんと蒸らせ。温度を下げるな。
以上の五つです。具体的に書くと色々あるので自分で調べてください。
ちなみにもう一つ、ヴィクトリア時代のルールがありまして、「茶を飲んでいる時に人の陰口、政治、宗教、子供の話題はNG」というものです。まるでtwitterみたいだぁ(直喩)
ミルクティーについて
まず大前提として、イギリスで紅茶というとミルクティーです。ストレートティーより多く飲まれています。
次にミルクティーを大きく二つに分けます。これは簡単で、イギリス式(イングリッシュ・ミルクティー)とインド式(インディアン・ミルクティー)です。
イギリス式は普通のミルクティーだと思っていいです。ストレートティーにミルクをぶち込むとできます。対するインド式は鍋に茶葉と牛乳を入れて煮出し、それから砂糖を大量に放り込みます。ミルクセーキみたいっすね。
ペットボトルのロイヤルミルクティーはインド式に近いですね。甘いし。ちなみにロイヤルだけど王室は関係ありません。
派閥争い
ではこれらを覚えた上でミルクの入れるタイミングを考えましょう。各派閥の主張は以下の通りです。
MIF(先にミルクを入れる派)の主張
・スプーンを使わなくても混ざる(カップがスプーンで傷つかない)
・香りが立ちやすい
・カップに茶渋が付かない
・熱い紅茶を一気に注ぐと(当時の質の悪い)カップが割れる
MIA(後からミルクを入れる派)の主張
・ミルクの量を調整しやすい
・お茶会などで個々人が自由に注げる
・ストレートティーの色と香りを楽しんだ後にミルクティーにできる
・カップぐらい傷ついたり割れたりしたら買えや貧乏人
というのが各派閥の主張です。一番の問題はスプーンとカップの二つです。紅茶文化初期は銀製のスプーンも陶磁器のカップも高級で貴重品だったからです。故にMIFは当時の労働者階級、MIAは上流階級に多かったそうです。茶の入れ方一つで階級が分かれてんのかブリテンは……。イギリスを舞台にした映画を見ると、この二つの差で暗にキャラの生い立ちを見せていたりします。それ分かるのイギリス人だけだろ!いい加減にしろ!気づくか!
この争いは長い間続き、数多の英国人が血みどろの中に沈んでいきました。裏切り、加熱する戦争、愛する人との別れ、飛び交う銃弾。その争いは長く苦しい物だったそうです。(自社調べ)
しかし2003年、英国王立化学協会が研究によって決着を着けたのです! 王立の公共機関が何をやってるんですかね……。ちなみにこの研究を行った理由は、「最近若者の間でコーヒーが流行ってて腹立ったから」だそうです。
馬鹿か?
この研究結果によると「ミルクを後から入れると蛋白質が固まるし、味も悪くなる。だから先に入れとけ」ということで、MIF派の勝利となりました。しかしこれに反発するMIAが反証実験を多数行い反発。数多の論文によって学会が荒れました。考古学は適当のくせに紅茶についてはアホほど研究する先進国の鑑。
こんな美しくも馬鹿らしいイギリスの紅茶文化、ぜひ一度どこかで二つの紅茶を飲み比べてください。どっちがどう美味しいかを確認し、イギリスの掲示板でレスバに参加してきてください。
じゃあ僕は今から焼酎のお湯割りを飲みます。
参考資料 図説 英国ティーカップの歴史 紅茶で読み解くイギリス史
著 Cha Tea 紅茶教室 河出書房新社
0から始める本格紅茶(同人誌) 著 ハヤシングエルス